水のアラカルト

水の科学

水の理化学的性質

水は飲料水として私たちの生命を支えてくれるだけでなく、生活用水としても社会生活に欠かせないものです。

水素+酸素=水

化学的に水といえば水素と酸素とが化合してできたものですが、自然の水はこのような純水とは異なり、多かれ少なかれ何かを溶かし込んでいます。水は溶解力の大変強いもので、泥土はもちろん岩石でも溶かしこむ性質を持っています。そのため、水が流れてきた道筋によって、種々の溶解物が含まれた水もできれば、あまり含まない水もできます。このように水が他の物質をよく溶かすということは、水の化学的性質としての特徴です。

水道水、井戸水、海水がみなそれぞれ違った味を示すのは、なぜでしょうか。それは溶けている物質の種類と量がそれぞれ違うからです。カルシウム分や鉄分を溶かしている井戸水や河川水と、食塩(塩化ナトリウム)を主とするミネラルを多く溶かしている海水とを比較すれば、よくわかります。

水の状態変化

純水(H2O)は、1気圧(760ミリメートルエイチジー)の下では0℃で氷となり100℃で沸騰する性質を持っています。この水の性質は、温度の基準となっています。純粋な水は味もにおいもなく、常温、常圧の下では無色透明の液体です。水が氷に変わる時に、約9パーセントの体積増加があります。冬期に水道管が凍結して壊れるのもこのためです。もし水に何かの物質が溶解していると、凝固する温度は0℃以下になります。水の密度の最大は4℃で、この温度の時、1リットルは1キログラムです。4℃より高くても低くても密度は小さくなり、体積は膨張します。

蒸発と沸騰

水は常温に放置しておくと、絶えず表面から気化し水蒸気となります。ぬれた洗濯物が乾くのはそのためです。密閉した器のなかでは、水蒸気が一定の圧力になるまで蒸発が進み、その後は蒸発しません。このときの圧力を蒸気圧といいます。蒸気圧は一定温度では一定の値を示しますが、温度が変わるとその値も変わります。一般に蒸気圧は温度が上昇するにつれて増加し水の蒸気圧が外気圧に等しくなれば、水面からの気化だけでなく内部からも気化が起こるようになります。これが沸騰という現象です。水の沸点が 100℃というのは、水の蒸気圧が100℃で1気圧に達することを意味しています。

水の状態変化

水は外界の条件にしたがっていろいろに変化します。川や湖や海の水は太陽熱によって蒸発し水蒸気となりますが、大気の温度が下がると水蒸気が凝縮(蒸気が液体になること)して水滴になり、雲や霧や雨をつくり、氷の結晶となって雪となります。このように、水は固体、液体、気体の3つの状態に変化しています。

氷←→水←→水蒸気の変化は、物質が変わったのではなく、状態が変わったにすぎないので、このような変化を物理的変化と言います。

地球上には、2×1018立方メートル(2×10の18乗)の水があり、そのうち海水が97.5パーセントで、淡水は2.5パーセント(極氷、河川水、地下水、大気中の水等)です。そして、この水は海水→水蒸気→雲→雨→陸水(河川水、地下水等)→海水と循環しており、この間に自然浄化されてきれいな水になります。

人体に供給される水分と排出される水分

人体の中で水は体重の60~70パーセントを占めており、体内に取り込まれた重要な物質の多くは水に溶けて身体の各所に運ばれ、生命活動に使われております。

ちなみに、血液の約80パーセントは水です。成人では、一人一日当り平均 1.5リットルの水分を排泄し、また呼気と汗によって1リットルの水分を発散させるので、少なくとも1日に2.5リットルの水分を摂らなければ生命活動は維持できないといわれています。

水のpH値

水のpH値

純粋な水は中性(pH7)です。水はいろいろなミネラル、二酸化炭素、まれに酸類などを種々の割合で含んでおり、その割合によって中性、酸性又はアルカリ性を示します。pH値は 図に示すように0~14の値で表し、7が中性、7未満が酸性、7を超える場合はアルカリ性です。

海水のpH値は8.4で、河川水など陸水のpH値は二酸化炭素の溶存量によって変わります。一般に、川の水は中性に近いpH値ですが、二酸化炭素を多く含む井戸水はpH値が低く、植物の炭酸同化作用で二酸化炭素が少なくなった湖の水のpH値は高くなります。また、名古屋市の水道水のpH値は6.5~7.5程度です。

自然水に含まれるもの

地球上に存在する自然水は、蒸発と凝縮の作用を繰り返して循環しています。大気中の水蒸気は降水となり、降水は地表で一部は蒸発して空中に、一部は地表を流れて湖沼や海へ流入し、残りは地下に浸透して地下水となります。

海水の成分は、どこでもほぼ一定とされていますが、地表水、地下水等の陸水の成分は、場所によりかなり異なっています。これらに含まれるものは一般に次のように区分できます。

(1) 溶存ガス

水に溶け込んでいる酸素や二酸化炭素で、主に大気から水に供給されます。水温が高いほど溶存量が少なくなる傾向があります。

(2) 溶存物質

一般的な自然水の主成分は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムの陽イオン、重炭酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオンの陰イオン、およびケイ酸等があります。水中では、陽イオンの総和と陰イオンの総和は同じで、電気的中和が保たれています。これらの主な起源は土壌や岩石からの溶出です。また、塩化物イオンについては、海から風で運ばれてくる風送塩が主な起源になることもあります。

(3) 浮遊物質とコロイド物質

浮遊物質は水中に浮遊している微粒子で、粘土やシルトなど主に土壌に由来し、肉眼でも判別できます。コロイド物質は0.1~0.001マイクロメートル(1マイクロメートル= 1,000分の1ミリメートル)の微細な粒子で、溶存物質と浮遊物質の中間に相当し、これは肉眼では判別できません。

(4) 生物

水中に存在する細菌、動・植物性プランクトン等があります。

(5) その他

これらの他、微量化学物質といわれる低濃度(1リットルあたりマイクログラム~1リットルあたりナノグラム:マイクロは百万分の1、ナノは十億分の1)で含まれる物質もあります。これらは、溶存しているものもあれば浮遊物質に含まれるものもあり、土壌や温泉など自然起源のものもあれば人工的に作られた人為起源のものもあります。

地表水の水質は降水量によっても影響を受け、雨の多い時の河川水は溶存物質の濃度が小さく、渇水の時は、溶存物質の濃度が相対的に大きくなります。例えば名古屋市の水源である木曽川の水について、硬度(カルシウムとマグネシウムの量)で比較してみると次に示すようになります。

多雨の時 渇水の時 平均
硬度 10 30 20

(単位:ミリグラム/リットル)

また河川水の主な成分の濃度は、河川の長さやその流域の地質によって変化します。世界的に見て長さが短い日本の河川では、これらのミネラルの濃度が一般に低い傾向にあります。木曽川の水は、ミネラルの濃度は 日本の河川のうちでも少ない方に属します。特にカルシウムが少なく、硬度、アルカリ度(重炭酸イオン)が低いことが特徴です。

世界および日本の河川の平均化学組成(ミリグラム/リットル)

  世界平均 日本平均 木曽川
カルシウム 15.0 8.8 6.4
マグネシウム 4.1 1.9 0.9
ナトリウム 6.3 6.7 5.6
カリウム 2.3 1.2 1.0
重炭酸イオン 58.4 31.0 16.9
硫酸イオン 11.2 10.6 7.4
塩化物イオン 7.9 5.8 4.7
ケイ酸 13.1 19.0 10.7

(世界:リビングストン 1963  日本:小林純 1960)


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