なごやの水道 歴史探検vol.7~創設工事の資金調達 英貨公債(ポンド債)~
最終更新日:2024年07月18日
名古屋市初のそして唯一の外債である英貨公債をご存じでしょうか?
それは主に上下水道の創設工事にかかる財源にあてるために明治42(1909)年に発行されたものです。当初は上下水道布設費のみを単独で募集する計画でしたが、途中から当時の市の5大事業である鶴舞公園新設費や精進川(現在の新堀川)改修費などと合わせ、一括して80万ポンド(781万6,000円)の英貨公債を募集することとしました。当時の市の一般会計予算が約158万円だったということですから、5年分に相当する大規模なものでした。
募集に当たって、はじめは内債を発行する予定でしたが、内債の一部を募集したところ外国資本家の間で注目されたことや、日露戦争後の国内経済の混乱から高金利であった国内の資金調達より外国からの資金調達を行うことが有利であったということから、横浜市にあったセールフレザー株式会社と公債引受に関する契約を結び、明治42(1909)年5月から7月にかけて、4回にわたって80万ポンドの英貨公債をイギリスのラザード・ブラザーズ商会を通じて発行しました。利子は5%とし年2回支払い、元金は7年据え置きの27年償還、引受価格は100ポンドにつき90ポンドという条件で、名古屋市は計72万ポンド(約701万円)を受領しました。
償還については、大正6(1917)年から昭和18(1943)年の完済を目指して着実に進めていましたが、太平洋戦争により昭和18年3月に施行された「外貨債処理法」に基づき、国が支払義務一切を承継しました。
写真は、明治42(1909)年6月15日に発行された100ポンド証券で、平成29(2017)年に名古屋市庁舎の倉庫で偶然発見されたものです。英貨公債証券の原本は、それまで現物が確認できず「大正昭和名古屋市史 財政編」に綴じ込まれたコピーでしか知られていなかったため、まさに100年の時を経た「世紀の大発見!」でした。現在水の歴史資料館に展示してあり、上下水道創設のため莫大な費用の調達に尽力した先人の努力を感じることができます。